(浜松コンピューティング調べ) 2017/10/10
開放式と制御弁式(VRLA)があり、開放式は液注入式で自動車・フォークリフト等の大型バッテリー等に使用され、制御弁式はメンテナンスフリーといわれ液注入の蓋が付いてなく、電動カート、バイク、バックアップ電源等に使用されています。歴史的には開放式が先に開発されて、構造も簡単なため普及品といえます。
バッテリーの保有エネルギーをどのように使うかにより区分されます。
a. 自動車用: エンジンの瞬間始動性能が重要視され、英語でStarting Battery、CCA(ColdCrankingAmps) Battery、SLI(StartLightIgnition)Batteryとも呼ばれ、低温時の始動性もテストされます。始動性の向上のために、極板をスポンジ状にして極板と液との接触面積を多くしています。運転中に充電して、エンジン始動時に最高性能が出るようになっているため、常に充電され電圧は高い状態になっています。特性上、ディープサイクルバッテリーより過(深)放電、繰り返し充放電に対して耐久性で劣ります。
b. ディープサイクルバッテリー: 電流を流し続け、持続して繰り返してエネルギーを使うため、サイクル用バッテリーとも呼ばれます。電動カート(小型電動車)、電動フォークリフト、床清掃機、ゴルフカート、溶接機、自走洗浄機、床掃除機、清掃ロボット、AGV(無人搬送車)、パソコンサーバーのバックアップ(UPS)等多方面に使用されています。
一旦充電した電気エネルギーを連続して放電しても耐えられるように、自動車用と比較して極板が厚くしてあり、「瞬発力は劣るが繰り返し充放電に強い」特性になっています。
マリン用バッテリーは、自動車用バッテリーとディープサイクルバッテリーの中間性能を狙ったバッテリーで名称の境目は不明です。
2)a,bと「放バッテ」の関係を分かりやすくするために、自動車用(a:緑実線)、電動カート用(b:赤点線.)、「放バッテ」での使用状態での電圧推移とエネルギー推移をグラフで対比して説明します。
自動車と電動カートは満充電状態の13.6V、「放バッテ」は、充電から開始します。「放バッテ」の時間軸は、見やすくするため4倍程度になっています。
(1)自動車用バッテリー(青の太破線) 出発、エンジン始動、走行、エンジン停止、始動、停止、夜間走行、戻り、始動の循環を示します。
1)出発時@でエンジンを始動するための大電流が流れて、電圧が急降下するA。下図の内部エネルギーは一時的に減少する。
2)Bは走行時で、始動に使ったエネルギーが自動車のジェネレーター(発電機)により復帰されるC。
3)停車、始動等でこの循環が繰り返され、充電状態が維持されバッテリーの劣化は少ない。
4)夜間には、ヘッドライト等の点灯で、電圧が下がり、バッテリーエネルギーも減少気味となるD。
(2)電動カート用バッテリー(ピンク2点鎖線)
1)専用充電器で帰宅後(夜間)に充電され電圧は高い状態であるE。
2)出発時にモーターに電流が流れると、バッテリーの内部抵抗で見かけ上の電圧が降下する。外出時にはモーターをオン・オフと繰り返し、内部エネルギーは連続的に減少する。
3)帰宅後(夜間)に充電される循環となる。
(3)「放バッテ」(緑太線)
1)測定前の状態が不明なため、条件を揃えるために満充電する[H1]。
2)放電開始時に、抵抗体に電流が流されて、電圧が降下する[H2](上記Eと同じ現象)。
3)「放バッテ」のマイコンがバッテリーの電圧を監視しながら放電を続け、放電限界(10.5V)に達すると放電を自動で中止する。
4)放電中止と同時に、電流が流れなくなるため、[H2]の反対作用で電圧がわずかに上昇する[H4]。
5)電圧が下がっている状態ではバッテリーの劣化につながるため、バッテリーに適合する充電器を使用して充電をする。
(「放バッテ」では、充電器用AC100V電源を自動でONとするユニットを用意しています[オプション]。)
化学反応を応用する製品のため、気温が高いと見かけ容量が増えて、急速放電すると見かけ容量が減ります。
バッテリーの外形寸法が大きくなると化学反応の極板と電解液が多くなり、容量は増えます。
バッテリーメーカーは、同じ大きさでどれだけ容量を増やすか、始動性能を上げるか、耐久性を上げるか等の研究をして、メーカー間で総合的な性能差が出ます。ただし、実用上の差はほとんど無いため、一般的にこれらの性能を数字で調べることはできません。「放バッテ」では、規定電圧(12Vバッテリーの場合は10.5V)で正確に放電を中止して、それまでの時間を画面に表示して、SDカードにも記録するため、同じ条件で充放電テストをすると容量が数字とグラフ(放電曲線)で比較できます。また、「放バッテグラフ」では、SDカードに記録された1秒ごとの電圧を時間軸で積分したAH値が自動で計算され表記されているため、検査時の正確な容量が分かります。
“ 充電”は電気エネルギーを化学エネルギーに変換すること、”放電”は化学エネルギーを電気エネルギーに変換することといえます。
充放電という化学反応には時間と温度の要素が関わってきます。容量を規定する場合は、どのような放電時間(と温度)でエネルギーを変換するかという規定が地域と用途により設けてられています。
1 ÷時間率(逆数)を放電(充電)レート[CA]と呼びこの数字もよく使われます。例えば、38AHの電動カート用バッテリーを10時間率(3.8A相当)で放電することを「0.1CAで放電する」といいます。
「時間率」は、「化学反応には時間が掛かる」という原理により、時間率が大きいほど、エネルギー(電圧×電流×時間)放出が増え、AH表示も大きくなります。
容量をダムの保水量で例えると、ダムに大量の砂成分が有り大量の水が染み込んでいるとするとして、速く放水(CA大)すると砂内の水が抽出されないが、ゆっくり放水(CA小)すると砂の内部の水が抽出され、あたかも保水能力が上がるようなイメージです。
「放バッテ」は、検査の速度と精度のバランスをとるため1CA前後で放電することを目標として抵抗値を決めています。当社実験で、10時間率表示のバッテリーを1時間率[1CA]程度で放電したところ、10時間率放電の70%くらいの容量になりました。
5時間で放電する「5時間率」、10時間で放電する「10時間率」、20時間で放電する「20時間率」がよく使われます。時間率が長いと容量が多いという数字になるため、カタログ比較するときは注意が必要です。
化学変化の原理で温度が下がれば、見かけ容量が減ります。 ダムの例で水では無く油を貯めていると考えると、冬場は油が固くなり、放水しずらくなるため保水(油)量が少なくみえるようなことです。
「放バッテグラフ」では、1CAの放電で近似値が出る2次関数を独自に作成しています。
関数に測定温度を入力することにより25℃基準に補正します(関数のため小数点以下も有効)。実験値から作成した標準的なグラフのため、お客さまが下記のように経験値を入力すると精度が上がります。
例:冬場、5℃で入力すると、補正をし過ぎてしまう。
→ 5℃ ではなく、少し高め7℃と入力すると補正値が0.77から0.85となり補正が少なくなります。
12Vバッテリーの場合、日本(JIS)、欧州(DIN)、US(SAE)とも10.5Vまで放電する場合の容量と規定しています。「放バッテ」もこれに準じています。
測定温度。日本、欧州は25℃、USは27℃前後を基準にしています。
バッテリーの性能測定でのスタート地点は常に「満充電」です。
満充電にするには、充電時の気温に合わせた電圧、電流、時間を制御することがベストですが、全てを満たすには細心の制御が必要となります。
一般的には、定電流定電圧方式の充電器が充電効率もよく、バッテリーにも優しいといわれています。
この方式は、充電初期には、最大能力電流で早く充電し、充電後期には、過充電電圧になる直前の電圧で充電します。気温で充電後期の電圧を変える充電器では、気温で最適な充電状態になりますが、複雑な回路になるためあまり普及していません。
廉価な充電器は、一定の出力でしか充電できないため、充電初期には、電流不足で充電時間がかかる点と、充電後期に電圧が上がり過ぎ、電解液を水素と酸素に電気分解する欠点があり、取扱いに注意が必要です。
正確に容量を測定するためには、いつも同じ充電器を使い充電してから測定することお奨めします。
バッテリーには電圧、寸法、容量が概略分かるような記号と番号が付与されていますが、その表現方法は、タイプ、メーカーにより異なります。
容量は[12V−38AH(10時間率)]等の表記をしている例が多くあり数字が大きいほど容量があります。
小さな2.3AH(バイク用)から電動フォークリフト用等の大型までありますが、「放バッテ」は、1〜100AH程度までのバッテリーの放電を想定しております。
自動車バッテリー形式(JISの場合)
@「性能ランク」といわれ、大きいほど始動性と、容量が上といえる。
A「横幅」「高さ」規格でA,B,-Hの順に長くなる。「B」は、横幅12.7から12.9cm、高さ20.3cmと規定。
B「長さ」24cmと規定。
Cマイナス端子の左右位置(左)。
ディープサイクルバッテリー(GS Yuasaの例)
@小型電動車用デープサイクル用のカテゴリーの商品区分。
A20時間率38AHの容量を持ったバッテリー。
B基本電圧
「SER38-12」と同容量のバッテリーを他社では「NP38-12」「LC-XC1238」「SC38-12」「HC38-12」等と称して販売。
バッテリーの内部には、希硫酸内に鉛成分の+−極板が浸してあり、充放電により、その物質(硫酸鉛と二酸化鉛)の移動が起きて電気エネルギーの交換が行われます。
濃硫酸は、比重が1.8で、バッテリーに使用する場合は約37%に薄めて比重を1.28程度にしているといわれています。
「充電すると、極板内の硫酸成分が電解液の水成分と入れ替わるため比重が上がり、放電では逆現象が起きる」といえます。
この反応の途中で、非伝導性結晶皮膜(サルフェーション)が極板に付着して、表面の活性が無くなり容量が少なくなります(劣化現象)。
鉛バッテリーは、構造が簡単なため、比較的簡単に製造できます。
高性能化のために、メーカーにより極板にペースト状物質を使う等の工夫が取り入れられて、同じ規格で同じ日に製造しても製造国、メーカーにより品質が異なる場合があります。また、製造時に、全数の容量検査をすることは難しいため、新品時に不良品が入る可能性もあります。
自動車用を除いて、多くの場合には、12Vバッテリーを直列に接続して、24,36,48Vで使用します。
12Vバッテリーの良品A、良品B,不良品Cを3個直列にして36Vで使用する不具合の一般例を説明します。
この現象はバッテリーを直列に接続すると常にA,B,Cに同じ電流が流れるための現象です。
1)充電時:
12Vバッテリーを3ヶの直列にして充電する場合に、充電器(マイコン式)は端子の電圧と充電電流をモニターしながら出力を制御します。
12Vバッテリーの場合、13.6V以上となると、発熱、水分解現象が現れるため、電圧が最大40V前後(13.6×3=40.8)になるとそれ以上電圧が上がらないようにします。
しかし、AとBが13.6Vになっても、Cの電圧が上がらない(例 12.0V)ため、充電器端子では40.8Vの電圧を出しつづけます。
その結果、良品A,B,に(40.8−12.0)÷2=14.4Vという高電圧がかかり、悪影響を与え急激にバッテリーバランスがくずれる可能性があります。Cの不具合程度が高い場合、A,Bの損傷は早くなります。
乾電池でも同じで、バッテリーを使用した製品にはこのような不具合を警告するため、「新品と旧品は同時使用しないでください」と注意書きを入れています。
2)放電時:
A,B,Cを満充電にすると、AとBは13.6Vまで電圧が上がりますが、Cは能力が落ちて12.0Vまでしか上がっていません。
放電を始めると、最初はA,B,Cの電圧(13.6×2+12.0=39.2V)が負荷にかかり通常放電をします。ところが、しばらくするとCの能力が無いため、Cの電圧はA,Bと比べどんどん下がります。
さらに放電を続ける(夜間灯の付け忘れ等)とCの電圧は0Vになります。
このまま接続しておくと、AとBには電圧が残り回路に電流が流れ、Cの−電極に+の逆電圧がかかります。
鉛バッテリーの特性として逆電圧がかかると、そのまま極性が変わったバッテリーとなってしまいます。このようになると、再充電の時、充電器にかかる電圧が異常となり「バッテリー異常」の警告を出し3個とも異常状態に至ります。
当社の実験でも逆極性になり、全体が充電不可能となりました。
3)放電テストによる劣化検証
急速放電すると、バッテリーに悪影響が出るという心配の声があるため「放バッテ」で2.3AH(10時間率)のバイク用バッテリーを用いて、1.1CA程度の放電テストで検証実験をしました。
結果:26回の充放電テストをして、初期34分36秒(以下、温度補正前)、最短33分09秒(13回目)、最長43分15秒(15回目)、最終35分42秒(28回目)、平均37分36秒であった。よって、急速放電テストでバッテリー劣化は殆どなかったと推測されます。
化学エネルギーの原理では、放電時間は常に一定のはずですが、このテストでの最小と最大で、10分06秒の差が出ました。
このばらつき現象は、新品を充放電する間に@硫酸が浸み込んだA充放電時の気温管理はしたが、極板温度まで管理していないため、極板付近で温度差があったB充電器のばらつき等が考えられます。
※自動車用バッテリーについては、大電流の継続放電極板に損傷を与える可能性があるため放電電流については使用が必要です。